数奇な運命の青菜姫
今回は音訳が生んだ悲劇の単語。
ゆで野菜を頼むと、「大陸妹」という青菜が出てくることがあります。
この野菜、福山萵苣というレタスの仲間で、食感もレタスらしいシャキシャキ感を感じられます。
さてその愛らしいネーミングについてはやはり台湾語が関わっているようです。
曹銘宗という作家によると、台湾萵苣(台湾レタス)は台湾語では「萵仔菜(e-a-tshai)」と読まれていたところ、eとaの発音が似ているため、a阿菜と発音され、さらに台湾南部では「妹仔菜(me-a-tshai)」と発音されていました。その後台湾市場に中国大陸種のレタスが持ち込まれた際に「大陸妹仔菜」と呼ばれ、さらに短く読まれて「大陸妹」となったとのことです。
ちなみに「大陸妹」と呼ばれるようになったのは2000年ごろかららしいですが、もともとは違う意味でした。
1980年代以降、密入国や偽装結婚により渡台し、非合法に性サービスに従事した中国人女性のことを「大陸妹」と言っていました。そのため大陸妹はネガティブな印象がつきまとっていました。
2017年6月中旬に台北藝術大學の大学院生である曾品璇さんが問題提起をし、大陸妹の改名運動が興りました。
その波は広く伝わり、2018年には農業委員会(日本の農林水産省に相当)が大陸妹は差別的ニュアンスがあるということで、大陸妹を使うのは控え、福山萵苣や大陸A菜などを使うようPRしました。
今はまだ移行期で大陸妹と呼ぶことが多いですが、ここ数年で福山萵苣と呼ばれるようになるのかもしれません。