建築から見た台湾社会
「台湾に木造建築はあるんですか?」
これは以前に台湾の建築について質問された際の言葉ですが、この質問を通じてあることに気づきました。
建築文化上、台湾では大きく3つの建築様式が併存しているといえます。
すなわち、先程の木造、レンガ造り、鉄筋コンクリート造りですが、下のようにここには1つの傾向、時代背景が反映されていることが見てとれます。
・木造:日本統治時代の建築
・レンガ造り:帝国主義下の欧米勢力が東アジアに接触していた際の近代建築
・鉄筋コンクリート造り:中華民国時代の近代建築
本来建築物はその土地の気候風土に最も適した材料や構造が採用されますが、台湾の建築文化は必ずしもそうではなく、その時代その時代に置かれた政治構造や文化の影響を強く受けている稀有な例といえます。
改めて整理すると、次の通りになります。
・木造:日本統治時代(日本文化)
・レンガ造り:清朝時代末期(西洋文化)
・鉄筋コンクリート造り:中華民国時代(中華文化・近代文化)
台湾は常に他者に統治された国と言われることがありますが、そのような台湾の複雑な歴史や政治構造が可視化されたものが台湾の建築文化だと言えるでしょう。
前述の通り、建築された時代の政治状況や文化を強く受けていますが、他方でこのような多様な建築様式が併存していることは特筆に値します。
政治状況や文化潮流が大きく変わると、前時代の遺物は徐々に消えていくのが歴史の常ですが、保存活動の他に所有者・住人のアイデンティティーが仮託されているのではないかと思います。